これから知っておくべきマイナンバーの知識
マイナンバー制度とは
マイナンバー制度は、住民票を有するすべての人に対して1つのマイナンバーを付し、共通の社会基盤として番号を活用することにより、公平・公正な社会の実現、国民の利便性の向上、行政の効率化を目的として導入されるものです。国民の利便性の向上は、行政機関間での情報連携を図り、添付書類の削減など、各種申請等の手続きを簡素化することで、申請者側の事務負担を軽減するものです。
マイナンバー制度のメリット
マイナンバー制度のメリットとしては、行政機関への各種手当の申請、所得税等の確定申告にあたり、他の行政機関が発行した住民票の写しや所得証明書等を添付書類として提出することがあります。今後マイナンバーが導入されると、情報提供ネットワークシステムを経由して、行政機関同士が情報を要求・提供することができるようになり、このような証明書の提出が不要になります。
12桁の番号
マイナンバー制度では、住民票を有するすべての人に特定の番号が付され、平成27年10月以降に各個人に通知されました。氏名、住所、性別、生年月日の基本4情報と関連付けられます。
マイナンバーは12桁の番号で、通知元は市町村長、通知方法は通知カード、利用目的の制限があり番号検索はできないことになっています。
マイナンバーの付番は行政サービスの対象者である個人、すべての住民が対象になります。住民基本台帳に登録されている外国人住民にも付番されます。また、マイナンバーの変更は原則としてできません。
通知カードと個人番号カード
通知カードと個人番号カードの違いですが、通知カードには顔写真がなく、身分証明書としては使用できません。通知カードは、勤務先等に対してマイナンバーを提供する際などに使用します。一方、個人番号カードは、表面に氏名、住所等とともに顔写真が表示され、市町村の窓口で本人確認を行って交付されることから、身分証明書として使用することができます。
特定個人情報
マイナンバーを含む個人情報は特定個人情報を定義されており、一般の個人情報よりも厳格な取扱いが要求されています。同様にマイナンバーを内容に含む個人情報ファイルは特定個人情報ファイルと定義されています。
なお、個人情報は、生存する個人に関する情報と規定されています。したがって、死亡した方のマイナンバーは、死亡した時点で特定個人情報に該当しなくなり、特定個人情報の提供・収集・保管の制限が適用されません。ただし、マイナンバーであることには変わりがないため、マイナンバーそのものに関する責務・制限・罰則は、引き続き適用されます。
マイナンバーの取り扱い
住民税を有するすべての個人に対してマイナンバーが指定付番され、マイナンバーが記載された通知カードが送付されます。
平成28年1月より開始されました「個人番号カード」の交付についてですが、送付された「通知カード」には、「個人番号カード」の発行申請書が同梱されることになっています。
この発行申請書に写真を添えて市町村へ郵送等すると、「個人番号カード」が送付されます。なお、「個人番号カード」の交付を受ける際は、「通知カード」を返納します。また、「個人番号カード」は、住基カードの代わりとなるため、住基カードを持っている場合は、あわせて返納します。
記載義務
マイナンバーの記載義務ですが、以下のとおりとなっています。
- 所得税(住民税及び事業税)は平成28年1月1日の属する年分以降の申告書から
- 法人税(住民税及び事業税)は平成28年1月1日以降に開始する事業年度に係る申告書から
- 法定調書は平成28年1月1日以降の金銭等の支払等に係る法定調書から
- 給与支払報告書は平成28年分の給与支払報告書から
- 申告書・届出書は平成28年1月1日以降に提出すべき申請書等から
提供を受けたマイナンバーは、マイナンバーを記載する書面の提出等に備え、書面やデータ等により収集・保管することができます。
なお、収集・保管は、マイナンバーを利用する目的に関連したものに限られるため、それ以外の目的で収集・保管することはできません。
したがって、法令で定める保存期間や税務上の時効を過ぎた場合など、利用目的がなくなったマイナンバーの保管を継続することはできませんので、利用目的がなくなった時点で、保管していたマイナンバーは廃棄する必要があります。
さらに、マイナンバーを保管するにあたっては、マイナンバーの漏えい、滅失またはきそんの防止等のために必要な措置を講じなければなりません。
マイナンバーの本人確認
個人番号関係事務実施者が、本人から直接マイナンバーの提供を受ける場合は、他人の番号を使用する「なりすまし」を防ぐために、「本人確認」をすることが義務付けられています。企業実務では、本人確認方法は原則として個人番号カード、通知カードと運転免許証等、マイナンバーの記載された住民票の写し等と運転免許証、これらのいずれかの方法で確認する必要があります。個人番号カードについては、身分証明書も兼ねているため、番号確認と身分確認を同時に行えます。通知カードについては、すでに雇用関係があり、雇用時に身元確認を行っている従業員からマイナンバーの提供を受ける場合は、改めて身元確認することは要しないため、番号確認用に「通知カード」のみを提示してもらうことでよいとされています。
給与所得の源泉徴収票
従業員へ交付する「給与所得の源泉徴収票」には、従業員、その控除対象配偶者および控除対象扶養親族のマイナンバーを記載する必要があります。そのため、従業員へ紛失しないように注意喚起する必要があります。
なお、従業員が、所得税の還付申告のために源泉徴収票を税務署に提出する場合は、マイナンバーが記載された源泉徴収票が必要ですが、住宅ローンの借入等のため、源泉徴収票を銀行等に提出する場合は、番号法の規定外の目的での提供となるため、逆に、マイナンバーをマスキングするなどの工夫が必要になります。
れらの状況を考慮すると、従業員の再交付請求の目的に応じ、再交付時には、当初からマイナンバーを記載せずに交付することは問題ないと考えられます。また、従業員の扶養家族の個人番号を取得するときは、その扶養家族の個人番号提供が誰に義務づけられているかによって異なります。原稿料や講演料等の報酬・料金等の支払先に対して、支払調書と同一の様式で支払通知書を送付する場合がありますが、この通知書は、法律上に規定された書類ではないため、支払者・支払先ともにマイナンバーの記載は不要です。
責務と制限
マイナンバーに関する責務と制限は、個人番号関係事務実施者には、規模の大小を問わず、次の責務・制限が課せられます。
一つ目は、マイナンバーの利用制限です。番号法に定められた場合以外の目的で、マイナンバーを利用することは禁止されています。
二つ目は、マイナンバーの提供の制限です。こちらも番号法に定められた場合以外の目的で、マイナンバーを提供することは禁止されています。この場合の提供とは、法的な人格を超える特定個人情報の移動を意味するため、社内の部署間でのマイナンバーのやりとりは提供には該当しませんが、系列会社間でのマイナンバーのやりとりは提供に該当します。したがって、親会社が、子会社の従業員のマイナンバーの提供を受けることや、出向社員のマイナンバーを、出向先に対して直接提供することはできません。
三つ目は、マイナンバーの収集・保管の制限です。こちらも番号法に定められた場合以外の目的で、マイナンバーを収集・保管することは禁止されています。また、個人番号関係事務を処理するために必要な範囲を超えて特定個人情報ファイルを作成することもできません。
四つ目は、マイナンバーの安全管理措置です。マイナンバーの漏えい、滅失または毀損の防止その他のマイナンバーの適切な措置をとることが要求されています。
安全管理措置のねらいとは、個人番号利用事務実施者と、個人番号関係事務実施者は、業務において他人のマイナンバーを収集・保管することになります。マイナンバーは、個人を特定できる個人情報そのものであり、これらが漏えいした場合、個人の権利利益に対する甚大な被害を招く危険があります。また、滅失・毀損した場合も、マイナンバーを利用した効率的な行政サービスを受けるという国民の利便等が害されることとなります。そこで、個人番号利用事務実施者および個人番号関係事務実施者に対して、マイナンバーに関する安全確保の措置が義務づけられています。
事業者がとるべき安全管理措置として、企業は、個人番号関係事務実施者として、番号法第12条の規定に基づき、収集したマイナンバーを安全に保管しなければなりません。「事業者向けガイドライン」の「特定個人情報に関する安全管理措置(事業者編)」では、事業者が講ずべき安全管理措置として、基本方針の策定、取扱規程等の策定、組織的安全管理措置、人的安全管理措置、物理的安全管理措置、技術的安全管理措置の6種類が挙げられています。
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